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Newsletter - September 2022 - Japanese

Unitalen Attorneys at Law China


業界ニュース:

中欧両当局のPCT国際調査機関試行プロジェクトが延長

先日、中国国家知識産権局と欧州特許庁が共同声明を発表し、両当局の特許協力条約(PCT)国際調査機関試行プロジェクトの終了時期を2022年12月1日から1年間延長して2023年11月30日とすることを宣言した。本プロジェクトでは、中国の出願人が提出したPCT出願は、国際調査機関として欧州特許庁を選択することができる。適用対象は、英語で中国国家知識産権局または世界知的所有権機関国際事務局に提出されたPCT出願で、延長期間内の上限は3,000件となる。なお、欧州特許庁が国際調査を完了した出願は、欧州での追加調査を必要としない。

2020年12月1日のプロジェクト開始以来、270名あまりの出願人が積極的に本プロジェクトに参加している。

(出典:中国国家知識産権局ウェブサイト)

グローバルイノベーションインデックス2022発表 中国は11位 10年連続で順位上昇

世界知的所有権機関(WIPO)は現地時間の9月29日、グローバルイノベーションインデックスの2022年版の報告書を発表した。調査結果によると、中国は昨年から順位を1つ上げて11位にランクインし、10年連続で着実に順位を上げ、中高所得の36か国・地域でトップであった。同報告書は、世界132の国・地域のイノベーションパフォーマンスを総合的に評価してランク付けしたものである。中国に対する同報告書の主な評価は以下のとおりであった。

1に、9項目の個別指標で世界1位となった。イノベーションインプットでは、「国内市場の規模」「正規研修を実施する企業の割合」「PISAの読解力、数学的リテラシー、科学的リテラシー」の3つの個別指標で1位、「国内産業の多様化」「産業クラスター発展状況」の2つの個別指標で2位、「グローバル研究開発企業上位3社の平均支出」「大学ランキング上位3校の平均スコア」「国内総生産(GDP)に占める総固定資本形成の割合」「GERDに占める企業出資の割合」の4つの個別指標で3位となった。イノベーションアウトプットでは、「自国民の特許出願件数」「自国民の実用新案出願件数」「自国民の意匠出願件数」「自国民の商標出願件数」「労働生産性の成長率」「貿易総額に占める創造的製品の割合」の6つの個別指標で1位となった。

2に、知的財産権の質の高い発展指標で高く評価された。同報告書によると、2021年の中国ブランド総価値は前年比7%増の1兆9千億米ドルで世界18位であった。そのうち、中国工商銀行は世界銀行業界ランキングで1位、華為(ファーウェイ)は科学技術業界ランキングで2位であった。ベンチャーキャピタル規模は前年比84%増の940億米ドルで16位であった。2020年のハイテク製品輸出額は前年比6%増の7,577億米ドルで4位、製造業に占めるハイテク製造業の割合は2018年比1ポイント上昇の48.1%で14位、知的財産権収入は前年比34%増の89億米ドルであった。

第三に、世界の五大科学技術クラスターでは中国のみ2地域がランクインした。同報告書によると、東京―横浜が依然として世界最大の科学技術クラスターであり、深圳―香港―広州、北京、ソウル、サンノゼ―サンフランシスコが2位から5位に続いた。

PISA:Program for International Student Assessment、国際学習到達度調査。

GERD:Gross Expenditure on Research and Development、国内研究開発支出額。

(出典:中国国家知識産権局政務WeChat)

中国の知的財産権保護、外資企業が全面的に評価

9月28日、中国の秦剛駐米大使はツイッターで、「過去10年間、中国の知的財産権保護に対する満足度は全体として大幅に向上した。中国政府は、世界中の企業が公正かつ厳格な知的財産権の保護を受けられるようにする自信と能力がある。」と発言した。

先日、中国国家知識産権局が発表したデータでも、合弁企業および外資企業の中国の知的財産権保護環境に対する評価が示されている。2021年、中国国外の出願人が中国で取得した特許権と商標登録はそれぞれ前年比23%増と5%増で、中国の知的財産権保護環境が認められていることが十分に分かる。2021年、合弁企業および外資企業の知的財産権保護に対する満足度は、「第13次5か年計画」当初に比べて順に4.52点と2.36点の上昇となった。

(出典:中国知識産権報)

中国国家知識産権局が第14回BRICs特許庁長官オンライン会議を主催

9月15日、中国国家知識産権局主催の第14回BRICs特許庁長官会議がオンライン形式で実施された。同会議は中国国家知識産権局の申長雨局長が議長を務め、ブラジル産業財産庁のクラウディオ・フルタード長官、ロシア連邦特許庁のユリ・ズボフ長官、インド特許意匠商標総局のウナット・パンディット長官、南アフリカ共和国企業・知的財産登録局のローリー・ボラー長官が出席した。世界知的所有権機関(WIPO)のダレン・タン事務局長がオンラインで挨拶を述べ、王彬穎事務次長とエドワード・クワクワ事務局長補が特別ゲストとして出席した。

同会議では、BRICs五庁長官が共同で「BRICs知的財産運用協力ガイドライン枠組み」の更新を承認した。今回更新された枠組みは、「知的財産権で国連2030アジェンダを支える」ことを協力目標に追加し、デジタル技術や知的財産権の保護・管理を今後の協力内容に盛り込み、協力体制の一層の整備が図られている。

また、BRICs五庁の8つの協力分野における進捗状況について審議を行い、「BRICs五庁人工知能審査規則比較研究報告書」「BRICs五庁意匠図面提出要求比較研究報告書」「BRICs五庁商標出願・審査手続比較マニュアル」などの複数の成果が承認された。

(出典:中国国家知識産権局政務WeChat)

 

 

典型事例:

「空気清浄機」特許権侵害紛争事件

事件の経緯:

達爾文技術国際有限公司(以下、「達爾文公司」)は、発明の名称「空気清浄機」の特許権者である。当該専利は主にスモッグ防止に用いられる空気清浄機で、同社は2007年12月26日に権利を取得した。達爾文公司は、航天通信控股集団股份有限公司の北京科技分公司(以下、「航天通信北京分公司」)が2014年11月以降、達爾文公司の係争特許の権利を侵害する「J・inG悟浄高効率縦型空気清浄機」(以下、「被疑侵害製品」)の生産、販売、販売の申し出を行っていることに気が付いた。また、南京宇潔環境系統技術有限公司(以下、「宇潔公司」)が航天通信北京分公司に対して、専ら係争特許の実施に用いる静電気沈降フィルターを提供、販売していた。達爾文公司は2012年に、宇潔公司が許諾を得ずに係争特許の権利の侵害幇助に用いられる静電気沈降フィルターを生産した行為に対して、弁護士書簡を発送していた。達爾文公司は訴訟を提起し、2被告に侵害行為の差止め、損害賠償および合理的支出計100万元の支払いなどを求めた。

一審法院は次のように判断した。被疑侵害製品の技術方案は係争特許の請求項1~3、15、18~21、24~27の保護範囲に該当し、航天通信北京分公司および宇潔公司の係争行為は権利侵害を構成し、両者の「被疑侵害製品は従来技術を使用している」とする抗弁は成立しない。航天通信北京分公司は達爾文公司の特許権を侵害する係争被疑侵害製品を製造、販売し、宇潔公司は同製品中のハニカム凝集フィルターを提供した。被疑侵害製品中のハニカム凝集フィルターはエアコンにも使用できるが、係争空気清浄機製品に適合する寸法であり、かつ係争特許製品の実施に使用する場合に限って粒子堆積作用を発揮することができる。したがって、ハニカム凝集フィルターは係争特許を実施するための専用の製品に該当し、「実質的な非侵害用途」はない。宇潔公司は係争特許の存在を知りながら、またハニカム凝集フィルターが係争特許の実施に用いる専用の部品であることを明らかに知りながら、航天通信北京分公司に提供しており、同社には侵害行為の幇助者としての主観的な故意があった。したがって、宇潔公司は航天通信北京分公司の侵害行為を幇助しており、共同侵害を構成する。一審法院は、2被告に侵害行為の差止めと、達爾文公司に対する経済的損失35万元および合理的支出15万元を連帯して賠償することを命じる判決を下した。宇潔公司と航天通信北京分公司はこれを不服として控訴したが、二審判決は控訴を棄却し、原判決を維持した。

評論:

本件は専利権侵害紛争で侵害の幇助が認められた典型事例である。技術用途の分析だけでなく、幇助者の主観的意図の判断にも及んでいる。本件は、訴訟で「実質的な非侵害用途」をいかに認めるかというルールに関して、参考にする意義がある。

(事例出典:北京市高級人民法院)

 「 」商標権侵害および不正競争紛争事件

事件の経緯:

2008年、斐楽体育有限公司(以下、「斐楽公司」)は、許諾を受けて「FILA」シリーズ登録商標の中国エリアにおける独占的使用権を取得した。継続的な普及促進と宣伝によって、「FILA」シリーズ登録商標は国内外で比較的高い知名度を有する。2016年6月、斐楽公司は、浙江中遠鞋業有限公司(以下、「中遠鞋業公司」)がオンライン店舗およびオフライン実店舗で、また、温州独特電子商務有限公司(以下、「独特公司」)がJD.comなどのオンライン販売プラットフォームで「傑飛楽旗艦店」「傑飛楽公式旗艦店」を開設して履物商品の宣伝・掲示、販売を行い、さらに斐楽公司が所有する「FILA」シリーズ登録商標に類似の の標識を使用していることに気が付いた。劉某は中遠鞋業公司の元法定代表者、独特公司の法定代表者、「GFLA傑飛楽」などを商標登録した商標権者として、前述の生産、販売および宣伝行為に関わっていた。斐楽公司は、3被告に侵害行為の差止め、経済的損失900万元および合理的支出41万元の賠償を命じる判決を求めた。

一審法院は次のように判断した。中遠鞋業公司、独特公司が訴訟対象の商品に「 」の標識を使用して「飛樂(中國)」と記載し、ウェブサイト上で の標識を使用したことは、斐楽公司の「FILA」シリーズ登録商標が享有する商標権を侵害するものである。中遠鞋業公司、独特公司は同種商品の事業者として、斐楽公司の商標の知名度を当然知るべきでありながら、自社が生産する商品上で係争商標に類似する標識を目立たせて表示し、かつ複数のオンライン販売プラットフォームで販売し、巨額の売上高を上げた。また、2010年7月19日には商標局が、第7682295号商標「 」が斐楽公司の第G691003A号商標「 」に類似することを理由に、「衣料、帽子、履物」を指定商品とする当該商標の出願を拒絶しており、3被告はこのときすでに斐楽公司が先行登録した「FILA」シリーズ商標を十分に知っていたにもかかわらず、訴訟対象の標識の使用が商品の出所の誤認・混同を生じさせる可能性があると明らかに知りながら、引き続き侵害商品を生産、販売しており、主観的悪意が明らかで、侵害の情状は重大で、懲罰的損害賠償を適用しなければならない。中遠鞋業公司にはブランドが3つあるが、いまだ各ブランドの販売量と権利取得状況を証明する証拠が提供されないことを考慮し、訴訟対象商品の営業利益が占める割合は3分の1であると推定する。これに基づいて中遠鞋業公司の2015年度、2016年度の侵害行為で得た営業利益を263万8,322元で算出し、3倍の791万元を賠償金額として判決を下した。二審法院は控訴を棄却し、原判決を維持した。

典型事例の意義:

本件は懲罰的損害賠償の適用において、侵害者が商標権取得手続きにおいて権利者の商標権を知りながらも侵害行為を実施したことにより、故意侵害が存在すると認められた典型事件である。

(事例出典:北京市高級人民法院)

「ジョンディア」商標権侵害および不正競争紛争事件

基本情報:

事件番号:(2016)京73民初93号、(2017)京民終413号

原告:ディア・アンド・カンパニー、約翰迪爾(中国)投資有限公司

被告:約翰迪爾(北京)農業機械有限公司、約翰迪爾(丹東)石油化工有限公司、蘭西佳聯迪爾油脂化工有限公司

事件の経緯:

ディア・アンド・カンパニーは1837年創業の世界的に有名な農業機械・林業設備メーカーである。同社は1976年に中国市場に参入し、2000年に約翰迪爾(中国)投資有限公司(以下、「約翰迪爾中国公司」)を設立した。ディア・アンド・カンパニーは「JOHN DEERE」、「約翰.迪爾」などのシリーズ商標を所有し、同商標の非独占的使用許諾を約翰迪爾中国公司に与えていた。2原告は、3被告がディア・アンド・カンパニーの登録商標と同一または類似の標章が付された工業用オイルなどの商品を中国で生産、販売し、また工業用オイルなどの商品を指定商品とする「佳聯迪爾」商標を登録し、屋号を「佳聯迪爾」「約翰迪爾」などで登記していることに気が付いた。2原告は、侵害行為で得た利益の3倍で懲罰的損害賠償の金額を算出するよう訴え、3被告に経済的損失500万元などを連帯して賠償するよう命じる判決を下すよう求めた。

一審法院は、3被告が2原告の商標権を共同侵害していると判断した。賠償金額の算定に関しては、3被告が実施した侵害行為の手段が多様で、同一または類似の商品上に係争商標を使用するだけでなく、ドメイン名登録や屋号登記などの手段で係争商標を使用したり、登録商標の手段で係争商標を複製、模倣、翻訳したりしていたことを考慮した。また、3被告は提携業者の数が非常に多く、遼寧省、黒竜江省、新疆ウイグル自治区、北京市に販売ネットワークを有しており、さらに侵害行為で相当の利益を得ているため、事件記録にある証拠から、3被告の2年間の侵害販売額は1,600万元を超えていると推定した。また、行政処罰を受けた後も引き続き侵害行為位を実施していることから、主観的悪意は明らかで、侵害の情状は重大である。侵害行為で得た利益は、差し押さえた侵害商品の数、関連行政処罰に関する侵害商品の月次販売額、商標権無効審判での侵害商品の月次販売額、2被告の平均販売単価、係争商品の所属業界の平均利益率などの指標を参考に算出した。賠償金額を前述の方法で確定した金額の3倍で計算すると、2原告が主張する500万元を大きく上回った。一審法院は2原告の賠償請求を全額支持した。二審法院は控訴を棄却し、原判決を維持した。

典型事例の意義:

本件は懲罰的損害賠償の適用において、故意侵害が存在し情状が重大なケースの典型事件である。被告の継続的な侵害行為は、実施した行為の侵害性を明らかに知っており、しかも行政処罰の決定を無視して侵害行為を継続したことを表すだけでなく、故意侵害と情状の重大さの両要件も備わっており、懲罰的損害賠償の適用要件を満たした事件である。

(事例出典:北京市高級人民法院)

集佳ニュース:

集佳シニアパートナーの趙雷弁護士、「中国商標ブランド保護デジタル化フォーラム」で基調講演

2022年9月15日午前、中華商標協会主催の「中国商標ブランド保護デジタル化フォーラムおよび中華商標協会デジタル化業務委員会除幕式」が北京で開催された。今回のフォーラムのテーマは、「新時代の商標ブランド保護のデジタル化と専門化が融合した新たなトレンド」で、集佳シニアパートナーの趙雷弁護士が招待を受けて出席し、基調講演を行った。

また、今回のフォーラムでは、中華商標協会デジタル化業務委員会が正式に発足した。集佳知識産権は、同委員会の最初の会員組織として選出され、趙雷弁護士が委員に任命された。

集佳パートナーの彭鯤鵬博士、米国法曹協会による後発医薬品訴訟参考書の編纂に関与

先日、米国法曹協会(ABA)編纂の『Pre-ANDA Litigation: Strategies and Tactics for Developing a Drug Product and Patent Portfolio』(Third Edition)が正式に出版された。同書では、集佳パートナーの彭鯤鵬博士が特別招聘著者として、中国医薬品登録および専利連携制度に関する内容の編纂に携わっている。

集佳上海支所が上海市商標ブランド協会の副会長組織に選出

2022年9月21日、上海市商標ブランド協会第5回理事会第6回会議が成功裏に閉会した。今回の会議では、集佳上海支所が上海市商標ブランド協会の副会長組織に選出された。

 

集佳の視点

手順の一部と方法全体との一体不可分な関係による

複数主体方法特許権侵害の判断をめぐる問題の解決

(三の三)

北京集佳知識産権代理有限公司 パートナー弁理士 王宝筠

六.関連の事例を踏まえての分析

複数主体方法特許権侵害の判断に関する海外の事例で最も有名なものはAkamai事件である。

Akamai事件では、本案を審理した地域法院裁判官は、まずBMC案で法院が作成して用いた「支配及び指導」基準を参考にした。当該基準では、被疑侵害者が侵害行為の中心となり、かつその他の者を支配または指導しこの侵害行為を実施して初めて、その他の者の行為を被疑侵害者の責めに帰し、さらには当該被疑侵害者が特許権侵害を構成すると判断することができる旨が指摘されている[1]

「支配及び指導」基準の欠点は、当該基準は異なる民事主体(方法における実施主体ではない)間の関係を切り口として行う分析であるが、方法の実施について言えば、異なる民事主体間にいわゆる「支配及び指導」が本当にあるのかについて不明確な点にある。BMC案およびその他の方法特許権侵害訴訟において、民事主体が他方の主体を本当に支配、指導したのかを判断することは難しい

本稿では、「支配及び指導」において注目されるのは,異なる民事主体間の関係であるべきではなく、方法特許の技術方案における異なる動作実施主体間の関係であるべきであると考える。特定の実施主体がその実施する動作を通じて他の実施主体によるその動作の実施に「支配及び指導」の働きを果たす場合、本稿における手順の一部と方法全体との一体不可分な関係を構成する。もちろん、ここでのいわゆる「支配及び指導」とは、目的性のある支配・指導であるべきである。この目的性が本発明の発明全体の目的であり、つまり全体の有利な効果である。これにより、支配・指導基準を次のように理解することができる。特定の実施主体の実施する動作がその他の動作を支配、指導して本発明の全体の有利な効果を共同で実現する場合、この実施主体の実施する動作と方法全体とは一体不可分であり、この実施主体の動作の使用については、方法全体の使用を構成する。

よって、本稿では、BMC案において設定された民事主体間の「支配及び指導」基準は、本来行うべきであった方法内部の手順の一部と方法全体との相関性分析からある程度逸脱しており、これにより分析の結論にずれが生じる可能性があると考える。Akamai事件で当初、被疑侵害主体は権利侵害を構成しないとの結論が設定された理由も恐らくここにあると思われる。

当然ながら、「支配及び指導」基準を異なる実施主体間の基準に修正したとしても、それは単に手順の一部と方法全体との間に一体不可分な関係が存在することの具体的な形態にすぎず、必ずしも全部ではない。それを唯一の基準として、すべての複数主体方法特許について侵害判断を行うことはできない。

Akamai事件の最終判決の結論は被疑侵害者が特許権侵害を構成するというものである。その根拠は「決定」説である。「決定」説に基づく判決では次のとおり指摘されている。被疑侵害者が特許方法の手順を実施する具体的な動作または当該動作の利益獲得者を決定したとき、かつ動作を実施する方式またはタイミングを確立したとき、直接侵害と認定することができる。[2]

本稿の考え方を用いると、「決定」説について次のような解説を行うことができる。

決定説に基づくと、被疑侵害主体が特許方法の動作を決定する。これは被疑侵害主体と特許方法との関係である。では被疑侵害主体は何のために決定するのかというと、それは本発明の全体の有利な効果であるはずである。このような全体の有利な効果を達成する目的から、全体の方法を決定し、また、方法における手順の一部に役立つ働きを発揮させる。当該被疑侵害主体による方法全体の「決定」が方法の全体の有利な効果を達成するためであることに基づくと、それが手順の一部に役立つ働きを発揮させることも全体の有利な効果を達成するためであるはずである。これにより、手順の一部と全体の有利な効果つまり方法全体の相関関係を構築することができる。これに加えて、当該被疑侵害主体が「決定」するものは本発明の方法でありほかの方法ではない。よって、被疑侵害主体の手順の一部と方法全体とが一体不可分な論理関係を有すると結論付けることができる。

ここから分かるように、「決定」説は本稿で述べる手順の一部と方法全体との間に一体不可分な関係が存在することの具体的な現れでもある。ただ、決定説において、このような一体不可分な関係は「決定」によって現れる。一方、「決定」説は同様に問題が存在する。議論の焦点は被疑侵害主体と特許方法との「決定」関係であり、このような「人」と「技術」との関係は証明が難しい場合が多い。また、「支配及び指導」基準と同じく、「決定」関係も一体不可分な関係が具体的に現れた形態にすぎず、一体不可分な関係の全部ではない。

支配指導基準、決定関係のいずれにしても、さらに2つの問題が存在する。第一に、このような基準を提起しただけで、背後の原理を明らかに示しておらず、このような基準をなぜ提起し使用して判断を行うのかについて困惑が生じる。第二に、この2つの基準について、適用できることのみを示し背後の要因を示さない場合、これが人為的に設けられた新たな基準であるとみなされがちである。これは現行法の規定を超えてしまう疑いがあり、法律の厳粛性を確保できない。

 

七.省察

(一)複数主体方法特許権侵害の判断における誤った認識

本稿の冒頭に戻ると、複数主体方法特許の侵害判断ではいわゆる克服が難しい判断がなぜ生じるのか。

本稿では一方では、権利の技術客体と権利自体との混同によるものであると考える。権利の技術客体(方法)と権利自体(使用)との混同により、「使用」が方法における各手順の運用であるとみなされ、それによって文言侵害原則の適用時に、「使用」に対しても各手順を運用させる「使用」であることが要求される。

他方では、使用を誤って製造行為として捉えられる可能性もある。いわゆる方法の使用とは、その方法を実現する必要があり、「実現」には手順を一つずつ実現し、それにより動的な動作が生じなければならないと一般に思うかもしれない。実際は、このような一つずつの実現は、「使用」の基準ではなく、特定の対象を「製造」する基準である。「方法の使用」については、方法自体が存在することを前提として行う使用である。このとき、動的な方法として、すでに存在している。いわゆる使用とは、それ自体が動的な方法に役立つ働きを発揮させるというだけで、すべての手順を一つずつ実現するということではない。後者は、正確に言えば「方法の製造」の基準である。

いわゆる判断の難しさを生むものとして考えられるもう一つの要因は、文言侵害原則を誤って適用するというものである。これは権利自身を誤って文言侵害原則の分析対象とし、それにより「権利自体」(技術客体の実施)の文言侵害を求めるという形で現れる。実際には、文言侵害原則は権利の技術客体の適用基準であり、方法が特許の保護範囲に属してさえいれば、文言侵害原則を満たし、その後は、その方法全体に使用が存在することを証明するだけで権利侵害の判断を行うことができ、かつ方法の各手順に対して使用することを要求しない。前文で分析したように、これは実は対象全体の使用を各手順の個別使用と混同した使用の集合である。

(二)省察

複数主体方法特許の判断が必要なのはインターネット、人工知能といった新しい技術のみなのか、従来の方法については必要がないのか、いわゆる特別な判断規則は従来の方法に適用できないのかという問題は不公平さをはらんでおり、省察が求められる。

本稿では、従来の技術分野にも複数主体(実施主体)方法特許が存在し、このような方法特許については分野が「従来」のものであるというだけで区別して扱うことはできないと考える。インターネット、人工知能技術分野に適用される上述の判断における考え方も同様に従来の技術分野の複数主体方法特許権侵害の判断に適用可能であり、適用すべきである。このような判断における考え方は特定の分野向けに特別に創設した特別な判断における考え方ではなく、「方法の使用」の本質を踏まえて関連の誤った認識を分析し、明らかにした一般的な考え方である。これはまさに本稿で「方法の使用」について一般的な分析を行う所以でもある。

当然ながら、従来の技術分野において、各手順間の論理的つながりはそれほど緊密ではない可能性があり、手順の一部自体が独立した技術的効果を達成でき、またはその手順の一部がほかの方法でも使用できそれによりほかの技術的効果を達成できる状況が生じる可能性がある。このとき、その手順の一部と方法全体とが一体不可分な関係を有することは証明できない。この状況は従来の技術分野の方法では多数であるとみられ、そのため従来の技術分野で上述の「一部――全体」の判断における考え方が使用される可能性は低い。しかし可能性が低いことからといって使用が存在せず、または使用できないということではない。従来の技術分野の方法の手順の一部が同様に上述の「一体不可分」の要件を満たす場合、同様に上述の判断における考え方を適用して方法の使用による特許権侵害の判断を行うことができる。

(三)素朴な正義感と特許文書の本質

複数主体方法特許権侵害に関する研究や分析はなぜこれほど多く行われているのかというと、背後の理由は恐らく、特定の主体が方法の全部の手順を使用しなくても特許権侵害を構成するというような結論を導き出せるという点にある。ではなぜこのような結論に向かって分析を行うのか。簡単に権利侵害を構成しないと確定してはいけないのか。

実は、これは素朴な正義感が働いている。

素朴な正義感を出発点として、現実では、特定の主体が確かに方法特許を実施している。このような実施は方法特許における手順の一部のみを使用する形で現れるが、当該手順の一部の使用から利益を得ていることは確かであり、これは実際のところ特許権者の権益を侵害している。

素朴な正義感に基づくと、当該主体は特許権者の権益に対して侵害を構成し、本来は特許権の規制を受けるべきである。このような素朴な正義感の後押しの下で初めて、複数主体方法特許権侵害の判断をめぐる問題の研究が盛んに行われている。本稿の分析も素朴な正義感を出発点として行っており、分析の結論は素朴な正義感に合致している。

手順の一部の一体不可分と方法全体の全体の有利な効果とが互いに関連する状況において、当該手順の一部を使用した被疑侵害者がその「使用」により利益を得ることには疑いの余地がない。本稿の考え方によると、当該被疑侵害者は実際に方法全体を使用しており、特許権侵害を構成する。これはまさしく利益志向の素朴な正義感と合致する。

複数主体方法特許権侵害の判断をめぐる問題を研究するもう一つの出発点は、特許の本質にある。特許の本質は法律文書の形式で技術方案の保護を行うことであり、法律文書は表層にすぎず、この表層で技術的本質を制限することはできない。これまでの限界性の認識に基づいた場合、大多数の複数主体方法特許はいずれも特許権侵害の判断における困難に直面するが、このような判断における難しさは法律文書(クレーム)の表現形式によってのみ生じるものである。これは明らかに本末転倒であり、技術を保護するという特許の本質から逸脱している。権利侵害の判断における需要を満たすために、複数主体が相互に作用する技術方案について、いわゆる一方的記載[3]の方式でクレームを記載すれば、本来明確に表現されていた技術方案が極めて難解で分かりにくくなる。これは全くの言葉遊びにすぎない。特許を技術の保護から言葉遊びへと変えるのは間違いである。これは本稿で複数主体方法特許権侵害の判断をめぐる問題を研究する原動力にもなっている。

よって、本稿では、複数の実施主体が相互に作用する方法について、特許文書で明確に複数主体の相互作用をクレームに限定することが可能であり、方法の使用に対する正しい理解に基づけば、このような複数主体方法特許を用いて、使用者による当該方法特許の手順の一部の使用が同様に特許権侵害を構成することを判断することができると考える。

 

おわりに

圧倒的大多数の複数主体方法特許は基本的にいずれも現行法の規定により、方法における手順の一部と方法全体との間に一体不可分な関係が存在するか否かによって、その権利侵害の判断をめぐる問題を解決することができる。これは関連の誤った理解の払拭と、「方法の使用」の本質的な意味に対する正確な把握によって成り立つ。ひいては、特定の被疑侵害主体が方法全体における各手順に対して使用を行うことは、「方法の使用」における特別な状況であり、通常の状況では、特定の主体が方法全体の手順の一部に対して使用を行うということもできる。やはり使用対象の一部ではなく全部に対して使用を行うため、可能性から言って、前者は後者よりも稀である。上述の「通常の状況」については当然ながら現行法の規定を超える規則を創設して権利侵害の判断を行う必要はなく、比較的特別な間接侵害を用いて解決すべきでもない。現行の法律規定に立脚し、法律に定める本質的な意味を深く掘り下げ、誤解を解消することは完全に可能であり、そうすれば複数主体方法特許の使用に関する権利侵害の判断を十分に実現することができる。

 
 

[1]明涛:「クラウドコンピューティング技術条件下における特許権侵害責任分析」知的財産権』、2017年第3期p.52

[2]管育鷹ソフトウエア関連方法特許複数主体による権利侵害の個別実施に係る責任分析」、『知的財産権』、2020年第3期p.15~16

[3]相互的な方法特許実施主体のみによって当該方法の全体方案を記載することもできる(すなわち、一方的記載)。

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