『国務院の涉外知的財産権紛争処理に関する規定』が公布
先頃、中国国務院の李強総理が国務院令に署名し、『国務院の涉外知的財産権紛争処理に関する規定』(以下、『規定』という)を公布した。2025年5月1日より施行される。『規定』は18条からなり、主に以下の内容を含む。
一、サービスの強化。国務院の関係部門が海外知的財産権情報の提供とリスクの早期警告を強化し、涉外知的財産権紛争の処理に関する指導業務機関と業務規程を完備させ、紛争処理に必要な対応指導と権利保護支援を提供することを明確にした。また、商事調停組織や仲裁機構が涉外知的財産権紛争解決に参加することを支持し、法律事務所や知的財産権業務代理機構などの涉外知的財産権サービスの能力向上を強化して、公民や組織に効率的で便利な涉外知的財産権紛争解決ルート及び涉外知的財産権関連サービスを提供する。
二、企業の能力構築の強化。企業に対し、法治意識の向上、社内規程制度の確立と整備、知的財産権人材の確保の強化、知的財産権の保護と運用の強化、自身による合法的権益の積極的な保護を要求している。同時に、国務院の関係部門に対して、涉外知的財産権紛争の重点分野と重要段階を中心に企業向けに宣伝・研修を実施し、典型的判例を組み合わせて涉外知的財産権紛争対応の経験と方法を紹介するよう要求している。企業による涉外知的財産権保護のための共済基金の設立を支持し、保険機構による涉外知的財産権関連の保険業務の展開を奨励している。
三、域外での証拠収集の規制。中国域内での文書送達・証拠収集は、中国が締結又は加盟する国際条約及び法律の規定に従って処理しなければならないことを明確にしている。域外に証拠又は資料を提供する場合、国家機密・データセキュリティなどに係わる法律・行政法規の規定を遵守し、法により主管機関の許可が必要な場合は、関連する法的手続きに従わなければならない。
四、不当な待遇への対抗。中国の公民や団体が内国民待遇を受けていない場合、又は十分かつ効果的な知的財産権保護を提供されていない場合、国務院商務主管部門が法に基づいて調査を実施し必要な措置を取ることができることを明確にした。外国が知的財産権紛争を口実に中国を封じ込め、抑圧し、中国公民や組織に対して差別的な制限措置などを講じた場合、国務院の関係部門は法に基づいて相応の対抗措置と制限措置を取ることができる。
https://www.news.cn/politics/leaders/20250319/a9f11f36d7e240f2b837415be19d6830/c.html
世界知的所有権機関が2024年の統計データを発表
中国が国際特許出願最多国
先頃、世界知的所有権機関は申告に基づく2024年世界知的財産権統計データを発表した。データによると、2024年の世界PCT(特許協力条約)国際特許出願総数は27万3900件で、前年比0.5%増であった。中国は出願数が同期比0.9%増の70160件で、依然として出願数最多国である。米国は54087件で世界2位、日本、韓国、ドイツがそれに続いた。
出願者別では、中国の華為技術有限公司(ファーウェイ)が6600件のPCT国際特許出願で世界首位となった。韓国のサムスン電子が2位、続いて米国のクアルコム、韓国のLG電子、中国の寧徳時代(CATL)であった。
2024年は、分野別ではデジタル通信が全体の10.5%を占め、2019年以来首位を走っていたコンピューター技術を抜いて首位に浮上した。その他、コンピューター技術、電気機械、医療技術及び測量が主な分野であり、これらの5つの分野の出願総数は公開されたPCT国際特許出願全体の40%を占め、2019年より5ポイント増加した。トップ10の技術分野の中で、デジタル通信と電気機械は2024年に最も高い増加率を記録した。
https://www.gov.cn/yaowen/liebiao/202403/content_6939177.htm
『国家イノベーション指数報告2024』が発表
中国のイノベーション投資が継続的に増加、企業のイノベーション能力が持続的に向上
国家イノベーション指数は国家の総合的なイノベーション能力を反映する重要指標である。中国科学技術発展戦略研究院が3月31日に中関村フォーラムで発表した『国家イノベーション指数報告2024』によると、中国はイノベーション能力ランキングで10位となり、イノベーションへの投資は増加し続けており、知識の生産は目覚ましく、企業のイノベーション能力は絶えず向上し、イノベーション環境が着実に改善されている。
同報告書によると、2024年の国家イノベーション指数ランキングで中国は世界10位で、2012年の第20位から10ランク上昇した。中国はこの10余年で最も急速に進歩している国であり、世界トップ10入りを果たした唯一の中所得国である。
同報告書は、イノベーションの資源、知識創造、企業のイノベーション、イノベーションの成果、イノベーションの環境の5つの面から評価指数体系を構築しており、中国はあらゆる面で優れたパフォーマンスを示している。
「イノベーションの資源」では5位にランクインした。2022年の中国の研究開発費は世界全体の約20.1%を占め、世界2位であった。研究開発費の対国内総生産(GDP)比は2.49%(2024年は2.68%に上昇)で14位、基礎研究費は社会全体の研究開発費の6.57%(2024年は6.91%に上昇)を占め、34位となった。
「知識創造」では7位となった。世界で最も引用される論文に占める中国の論文の割合は増加しており、ランキングは世界1位を維持している。中国の有効特許件数は335万1000件で世界首位であった。就業者1万人当たりの特許保有数は8位で、工業付加価値1億ドル当たりの工業意匠登録出願数は1位であった。
「企業のイノベーション」では9位となった。中国の三極パテントファミリは世界全体に占める割合が10.4%に上昇し、世界3位であった。企業研究開発費の工業付加価値に対する割合、社会全体の研究者に占める企業研究者の割合はそれぞれ18位、16位であった。サービス業輸出貿易に占める知的財産権使用料の収入の割合は20位であった。
この他、「イノベーションの成果」と「イノベーションの環境」はそれぞれ22位、20位であった。
https://www.gov.cn/yaowen/liebiao/202504/content_7016657.htm
中国最高裁が第5回の種苗産業における知的財産権司法保護の典型的判例を発表
典型的判例の指導的役割を十分に発揮させ、種苗産業における知的財産権保護を強化し、高度な司法によって種苗産業のイノベーションと高品質の発展を推進するため、中国最高裁は3月20日、第5回の種苗産業における知的財産権司法保護典型的判例15件を発表した。
今回発表された典型的判例は民事案件13件、行政案件1件、刑事案件1件を含み、その中には判決で裁判終了した案件もあれば調停案件もあり、植物新品種侵害案件もあれば不正競争案件や契約案件もある。事例に関わる品種には水稲、小麦、トウモロコシ、大豆などの主要な農作物品種のほか、リンゴ、コウシンバラ、バラなどの果物、花の品種が含まれる。
これらの判例は以下の司法の方向性を反映している。
一、厳格な保護を堅持し、イノベーション主体と育種家の合法的権益を確実に保護する。「岡優188」水稲品種権侵害案件において、登録品種の合法的譲受だけでは品種権者の損害賠償請求に当然対抗できないことを認定し、侵害者は依然として損害賠償責任を負うとした。「天山祥雲」コウシンバラ品種権侵害案件において、権利消尽の原則は既に販売された繁殖材料の再繁殖行為に適用できないことを明確にし、権利者の賠償請求額を認めた。「金粳818」水稲品種権侵害案件において、権利侵害行為の発生に組織的・意思決定的な役割を果たした一人会社の実質的支配者と、個人口座で会社の代金を受け取り侵害行為に直接参加したその他の人物に対し、会社との連帯賠償責任を負うよう命じる判決を下した。「油6019」大豆品種権侵害案件において、品種権者の許可なく認可されていない地域で登録品種の繁殖材料を生産・販売する行為は依然として侵害を構成すると認定した。著名育種家の氏名を無断使用した不正競争案件では、商品の外装に著名育種家の署名などを無許可で商用利用し、当該育種家と特別な関係があると誤認させる行為は不正競争を構成すると認定し、育種家の合法的権益を強力に保護した。
二、司法措置の革新を通じて、司法保護の実効性を継続的に向上させる。「岡優188」水稲や「先玉508」トウモロコシなどの品種権侵害案件において、権利侵害被疑種子の数量に関する直接証拠が不足している状況下で、品種権者に有利な計算方式を採用し、中国種苗産業ビッグデータプラットフォームの品種登録数を参考に損害賠償額を確定し、賠償額算定の難題解決に向けた新たな考え方を提供した。「サイレート」リンゴ品種権侵害案件において、収穫物の販売行為を生産・繁殖行為の自然な延長と見なし、収穫物販売の利益を賠償額算定の根拠とし、品種権者に対する十分な保護と全面的な賠償を強化した。また、侵害を停止させる方法として、被侵害品種の接ぎ穂を切断して接ぎ木する方法を採用し、品種権者の利益保護と侵害者の合理的な主張のいずれも考慮して、判決執行の柔軟性と合理性を示した。「紅運来」パイナップルや「京糯6」トウモロコシなどの品種権侵害案件において、親子関係の鑑定基準や分子マーカー検査基準が存在しない特定品種について、立証責任の転換や検査方法の科学性審査などを通じて技術的事実を明らかにし、鑑定基準の欠如による技術的事実認定の難題を実質的に解決した。
三、多元的な解決策を活用し、相互利益、共存共栄の実現に努める。「LEXTEEWS」などのバラの品種権侵害案件や「手でちぎれるパイナップル」栽培契約に係わる紛争案件において、裁判所は「司法は人民のためのもの」という理念と平等保護の原則に基づき、積極的に調停を推進し、当事者間の相互理解と共感を促し、「権利侵害行為」を「合法的使用許諾」に転換させ、「法廷で争う」状態から「共に利益を得る」状態へと導くことで、訴訟の終了と社会の調和を実現した。
四、刑事罰を強化し、種苗産業の安全を守る強固な法的ディフェンスラインを構築する。「荃優822」水稲品種の営業秘密侵害案件において、鄧某進氏ら4人を営業秘密侵害罪に該当すると認定し、それぞれに1年2ヶ月から10ヶ月の有期懲役と20万元から2万元の罰金を言い渡し、種苗業分野における犯罪行為を厳しく取り締まった。
https://www.court.gov.cn/zixun/xiangqing/459651.html